研究の目的 本研究では遊び場面における発声・発話の機会設定(大人機会設定条件)と随伴模倣を用いた介入によって、有意味語発話の生起頻度が年齢に比して低いASD児の発声・発話と音声模倣が増加するか、発声・発話の機会設定を行わない条件(子ども始発条件)にも効果が波及するか、保護者が介入した場合も維持するか、有意味語が獲得されるかを検討することを目的とした。研究計画 参加者間多層ベースラインデザインを用いた。参加児 自閉スペクトラム症の男児2名(A児、B児)とその保護者が参加した。場面 A児は家庭の一室、B児は大学のプレイルームで実施した。介入 支援者は参加児の注意を引き、モデルとなる発話を提示した。参加児の発声・発話や音声模倣が生起されたら、支援者はその発声・発話や音声模倣の直後に随伴模倣を提示した。同様の手続きでおもちゃを変更したセッションと、保護者が介入を実施するセッションを設けた。行動の指標 発声・発話の生起率、音声模倣の生起率、有意味語の発話数を測定した。結果 大人機会設定条件において両参加児の発声・発話、音声模倣、有意味語の発話が増加した。また保護者セッションにおいても介入効果が維持された。一方、参加児が自発した発声・発話に随伴模倣を行う子ども始発条件においてはA児の発声・発話を除き、大きな変化は見られなかった。結論 有意味語発話の生起頻度が年齢に比して低いASD児の音声模倣を促すには、支援者が発声・発話の機会設定を行った上で、表出された発声・発話や音声模倣に随伴模倣を提示する手続きが有効であることが示唆された。
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