行動分析学研究
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展望
我が国における発達障害のある子どもの親に対するペアレントトレーニングの研究動向――系統的レビューによるアップデート――
山口 穂菜美吉本 茜原口 英之
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2021 年 36 巻 1 号 p. 67-94

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抄録

本研究では、我が国の発達障害のある子どもの親に対するペアレントトレーニング(parent training: PT)に関するエビデンスをアップデートすることを目的に、国内のPTの実践研究を系統的にレビューした。2012年から2018年に発刊された研究論文50本(研究数51)を抽出し、サンプルサイズ、子どもの特徴、PTプログラムの特徴、効果評価の特徴、効果を分析した。サンプルサイズの平均は親が11、子どもが10であった。研究の69%が学童期、59%が幼児期の子どもを、そして80%が確定診断のある子どもを対象としていた。35%が国内の代表的なPTプログラムの研究であった。親への効果は、77%が標準化された検査・尺度、18%が観察データを用い、80%が事前事後テストデザイン、16%が単一事例実験デザインにより評価していた。子どもへの効果は、55%が標準化された検査・尺度、29%が観察データを用い、57%が事前事後テストデザイン、28%が単一事例実験デザインにより評価していた。介入群と対照群の比較研究は6件あった。多くの研究によりPTを受けた親子の多様なアウトカムの改善が示され、PTの効果に関する一定の知見が得られた。しかし、我が国のPT研究は、サンプルサイズが小さく、群間比較研究が少なかった。また、対象やプログラムに関する詳細な情報や、実行度、参加率、プログラムの評価の報告が不足していた。今後、より厳密な研究デザインを用いた研究の蓄積と、PTの対象、プログラム、評価に関する詳細な報告が求められる。

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© 2021 一般社団法人 日本行動分析学会
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