行動分析学研究
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実践報告
発達性読み書き障害児の漢字書字習得に対するオンライン指導の効果
太田 成美内田 佳那丹治 敬之
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2022 年 36 巻 2 号 p. 149-158

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抄録

研究の目的 本研究は発達性読み書き障害児を対象に、オンライン漢字書字指導の長期学習効果を検討した。研究計画 刺激セット間多層プローブデザインを用いた。場面 大学の教育相談内のオンライン指導場面で実施した。参加児 特別支援学級に在籍する小学4年生の発達性読み書き障害児1名であった。介入 Web会議システムの画面共有機能を用いて、3種類の介入手続きを実施した。1)漢字の画要素の分解、2)漢字画要素の音声言語フレーズの暗唱、3)フレーズに応じた漢字画要素の書字指導であった。さらに、家庭で漢字画要素の音声言語フレーズの復習を実施した。行動の指標 漢字書き取りテストにおける正しく書けた漢字数(正反応数)を指標とした。結果 介入後、参加児の正反応数は増加した。また、介入期の正反応水準は2か月後まで概ね維持された。社会的妥当性では、本研究の指導効果の受容度、母親の負担度、参加児の学習態度の変化に対して概ね肯定的な評価が得られた。結論 Tau-Uによる効果量算出の結果から、介入効果は限定的であると判断されたが、オンライン指導により正反応数は増加し、長期的な漢字書字反応の維持が示された。本研究の知見から、発達性読み書き障害児の学習機会の保障、漢字書字指導法における新たな手法が示唆されたといえるだろう。

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© 2022 一般社団法人 日本行動分析学会
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