抄録
2名の自閉症児に対して他者のメッセージを伝言する行動を、精神薄弱養護学校の日常的な生活場面で指導した。往信行動は、「〜先生、給食の用意ができました。いらしてください」というメッセージを託された対象児が、伝言先の先生のもとへ行ってそれを言うこととした。対象児が往信行動を自発的に表出した場合にも模倣によって表出した場合にも、伝言先の先生が社会的強化因を提示した。往信行動が形成された後に、復信行動を導入した。復信行動は、新たに「お先にいただいてください、とおっしゃいました」などのメッセージを託された対象児が、もとの場所に戻ってきてそれを言うこととした。2名ともに往信行動を獲得し、日常生活の中で対人般化、場面般化、反応般化がみられ、長期にわたって維持された。一方、復信行動に関しては、1名で往信行動との間に混乱が起こり、他の1名で1種類の復信文のみを表出するにとどまった。結果から、学校生活の中で伝言行動を指導する際の利点と留意点について論じた。