2022 年 48 巻 1 号 p. 47-60
社交不安症の維持要因として、自己関連刺激への注意バイアスが指摘されている。メタ認知療法によると、注意の向け方に関するメタ認知的信念が注意バイアスや社交不安症状に関与している。本研究では、社交不安症状と表情への注意バイアス、注意の向け方に関するメタ認知的信念の関連性を検討した。大学生55名を対象に、社交不安症状および肯定的/否定的なメタ認知的信念を測定する質問紙尺度と、注意バイアスを測定するドット・プローブ課題を実施した。その結果、社交不安高群において怒り顔および笑顔への注意バイアスが認められた。また、怒り顔への注意バイアスと社交不安症状の関連性は、否定的信念により完全媒介されることが示された。注意バイアスに焦点を当てた介入を行う際は、その過程で否定的信念に働きかける必要があると考えられた。