2022 年 48 巻 2 号 p. 183-191
本研究の目的は、小堀・丹野(2002)で確認された完全主義が抑うつに至るプロセスを、不安の影響を考慮して再検討することであった。大学生346名を対象として、完全主義、抑うつ、不安をそれぞれ測定した。その結果、小堀・丹野(2002)と一致する知見として、(1)完全性欲求は高目標設置と失敗恐怖を促進する、(2)高目標設置は抑うつを抑制する可能性がわずかながらある、といった点が示唆された。一方で新たな知見として、(3)失敗恐怖は抑うつと直接的な関係は示されず、不安を媒介して間接的に抑うつを促進する関係性のみを示す、(4)高目標設置は不安を抑制する、といった点が示唆された。これらの結果から、抑うつと不安の改善を目的とした心理学的支援に完全主義を応用する意義について議論した。