生物教育
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研究論文
高校生の進化概念についての調査研究
―生物II「生物の進化」学習後の生徒の進化概念の実態―
福井 智紀
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2000 年 40 巻 3-4 号 p. 122-138

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抄録

生物II「生物の進化」を学習した後の高校生に対して,進化概念についての実態調査を実施した.その結果,以下のことが明らかとなった.

(1)ラマルク的進化概念に類似した誤った進化概念を所有する生徒が,多数認められた.(2)ラマルク的進化概念以外の,過去の進化概念に類似した誤った進化概念を所有する生徒が,(1)ほどではないものの認められた.(3)多数の生徒は,現在の科学的な進化概念の理解が不十分であった.(4)多数の生徒は,集団遺伝学の立場に基づく進化概念の理解が不十分であった.(5)「自然選択」という語の意味を誤って理解している生徒が,多数認められた.

一方で,正答率の非常に高い選択肢もあり,生徒が学習によって正しく理解していると見なせる内容・項目も,わずかだが見出された.しかし全般的に見て,ある選択肢にラマルク的立場から回答した生徒が,別の選択肢にはそうではないというように,生徒の問題・選択肢への回答は一貫していなかった.このことから,多数の生徒は個別の状況に依存しない一貫した進化概念構造を構築しえていない,ということが示唆された.

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© 2000 一般社団法人 日本生物教育学会
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