生物教育
Online ISSN : 2434-1916
Print ISSN : 0287-119X
40 巻, 3-4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
研究論文
  • ―生物II「生物の進化」学習後の生徒の進化概念の実態―
    福井 智紀
    2000 年 40 巻 3-4 号 p. 122-138
    発行日: 2000年
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー

    生物II「生物の進化」を学習した後の高校生に対して,進化概念についての実態調査を実施した.その結果,以下のことが明らかとなった.

    (1)ラマルク的進化概念に類似した誤った進化概念を所有する生徒が,多数認められた.(2)ラマルク的進化概念以外の,過去の進化概念に類似した誤った進化概念を所有する生徒が,(1)ほどではないものの認められた.(3)多数の生徒は,現在の科学的な進化概念の理解が不十分であった.(4)多数の生徒は,集団遺伝学の立場に基づく進化概念の理解が不十分であった.(5)「自然選択」という語の意味を誤って理解している生徒が,多数認められた.

    一方で,正答率の非常に高い選択肢もあり,生徒が学習によって正しく理解していると見なせる内容・項目も,わずかだが見出された.しかし全般的に見て,ある選択肢にラマルク的立場から回答した生徒が,別の選択肢にはそうではないというように,生徒の問題・選択肢への回答は一貫していなかった.このことから,多数の生徒は個別の状況に依存しない一貫した進化概念構造を構築しえていない,ということが示唆された.

  • 森本 弘一, 熊谷 敏丈, 内山 由紀
    2000 年 40 巻 3-4 号 p. 139-144
    発行日: 2000年
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー

    ヨツヒメゾウリムシ(stock 51)を用い,紫外線(UV-B)及び紫外線照射後の白色光の照射が生育に及ぼす影響を調べ,高等学校生物における実験教材開発を行った.

    UV-B照射には,健康線用蛍光ランプを用いた.紫外線の影響は,500J/m2とl,000J/m2の線量で紫外線照射後,照射した細胞の増殖を6日間測定した.また,光回復の実験として,紫外線照射後,24時間蛍光灯を用いて白色光(20,000 lx)を照射し,同様に6日間細胞数を測定した.紫外線の影響を見た実験では,紫外線を照射しない群の細胞数は,紫外線照射の群に比べて多かった.細胞数の違いは,紫外線照射後2日目から5日目まで観察することができた.光回復の実験では,白色光を照射し た群の細胞数は,紫外線のみを照射した群に比べて多かったが,紫外線を照射しない群を越えることはほとんどなかった.以上の結果は,6日以内に得ることができ,実験装置は高等学校で十分準備できるものであった.このことより,本実験は,生物に及ぽす紫外線の影響及び光回復現象を示すものとして高等学校において利用できるのではないかと考える.

  • 大川 ち津る
    2000 年 40 巻 3-4 号 p. 145-157
    発行日: 2000年
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,大川(1997)の植物検索用データベースと活用プログラムの検索機能を強化することである.新しいデータベースは種子植物2,172種,166形質のマトリクスである.このデータベースを活用する一覧表式検索プログラムを開発した.新しいプログラムの主要機能は植物検索であるが,副次的機能として植物データの抽出,追加,訂正,植物写真画像の表示などを含む.植物検索プログラムの機能を確認するために,教師や学生を 対象として実習を行った.その結果,このプログラムは植物検索に有効に使えることが示された.

  • 芋生 紘志
    2000 年 40 巻 3-4 号 p. 158-165
    発行日: 2000年
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー

    大学生に対してアンケート調査を行い,高等学校生物における発生分野の学習内容の理解度を調べた.その結果,原因と結果の関係がわかりやすい形成体については理解度が比較的に高いが,複雑な現象である両生類の三胚葉形成や原基分布図の意味については理解度が比較的に低いことがわかった.他方,学生はビデオ映像やコンピュータ動画が教材として使われることを希望しており,複雑な発生現象を視覚的に捉えたいという意識を持つことも示された.この状況を踏まえ,まず二次元で表されてきた原基分布図を三次元的,立体的に表した.次に,各予定域の発生に伴う移動を三次元的に図示し,痰胚形成の進行に伴って予定神経域が神経板となること,予定表皮域が神経板以外の体表を包むこと,そして中胚葉の各予定域が胚の内部へと陥入し外胚葉の内面に接して位置するようになることなどを示した.これにより,予定域の意味や三胚葉形成の進み方,さらに「分化の決定」の概念の説明が容易になると思われる.大学生への調査は,これらの三次元的図が発生現象の理解に役立つことを示唆しており,このような教材の工夫は,発生の基本を理解し,さらには,現在未解決の問題を認識することにもつながると期待される.

feedback
Top