生物教育
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研究論文
都市部と郊外に移植したウメノキゴケの成長の違いと環境教材の可能性
近 芳明大村 嘉人
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2008 年 48 巻 4 号 p. 221-228

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抄録

大型葉状地衣類のウメノキゴケからくり抜いた円形移植片を野外において樹皮上に固定し,都市部と郊外における移植片の成長の変化を調べ,環境教材としての可能性を検討した.移植実験の時期は,4月以降10月頃までが適当であった.移植片は,移植後3か月および6か月後では,はじめと比較して1.3倍,約2倍に増えた.また,移植3か月後では,切断面に形態的な変化は認められないが,6か月後にはほとんどの移植片で小裂片の形成が観察できた.都市部と郊外に移植した移植片の成長と形態形成の違いを比較すると,都市部に移植された移植片の成長は1.2倍と遅く,形態形成も全くみられなかった.一方,郊外では移植片は1.8倍に成長し,小裂片の形成も認められた。移植期間は3か月であることから学期内での実験が可能である。これらのことから,ウメノキゴケの移植実験は,都市部と郊外の環境の違いを気づかせる環境教材として利用することが可能であると考えられる.

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© 2008 一般社団法人 日本生物教育学会
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