2021 年 62 巻 3 号 p. 150-159
本研究は,動物の体のつくりやはたらきを知るための身近な生物の骨格標本を用いた学習方法の実践とその効果を報告するものである.
大阪市立東田辺学校の6年生児童40名(男子20名,女子20名)の協力を得て授業実践を行った.よく煮込むことのみによって作製した豚足の骨格標本および市販のニワトリの手羽元,さらに,イラスト付きスライドを参考資材として授業で用いた.骨を直に観察すること,骨の成長過を実感すること,造血器としての骨の役割,骨の中の細胞(骨をつくる細胞・骨をこわす細胞)の存在など,一般には視覚的に捉えることが困難な内容を,人と他の動物の標本やスライドを用いることで児童達に“見て”もらい,実感させた.また,観察のみならず骨の成長が全身にどのような影響をもたらすのかなど,より発展的な内容についても追加解説し,体のつくりと働きを捉えることを理解しやすい内容とした.
アンケートは授業前と授業後に行った.授業の前と後を比較すると,特に骨への知識や着眼点に著しい違いが見て取れた.さらに,骨病変や加齢性変化など,正常の骨の成長のみならず疾患までへも興味の幅を広げ,探究心・好奇心を涵養できた様子が窺えた.
結語として,身近な生き物を用いた実習形式の授業は,机上で得た知識を実感と納得に基づく“見識”へと知識の階層を昇華させ,新たな疑問を抱ける児童へと成長できるなど,教育効果が高い取り組みであることが示唆された.