生物教育
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研究論文
特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」を題材とした授業実践と防除対策
―サクラ被害マップの作製と活用―
倉林 正深谷 将髙橋 瑛人武村 政春
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2021 年 63 巻 1 号 p. 10-21

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抄録

本研究は,近年,全国的に被害が拡大している特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」を題材とした教材を開発することで,生物教育で不足している外来生物教材の蓄積および被害地域の防除対策の一助とすることを目的とした.クビアカツヤカミキリは,サクラ類を中心に被害をもたらすことから,本研究では「生物基礎」の授業で身近なサクラの被害状況について調査を行った.調査したサクラの場所は専用のアプリケーションを使って,Web地図に記録することで「サクラ被害マップ」を作製した.この授業実践は,クビアカツヤカミキリに対する認識や理解,保全意識を向上させるなどの教育効果が示された.また,「サクラ被害マップ」の分布データについてクビアカツヤカミキリ対策を行っている公共機関に提供することで,新規被害樹の発見に貢献することができた.

以上より,本研究で開発した外来生物教材は,生徒たちに様々な教育効果を与えるだけでなく,クビアカツヤカミキリ被害の早期発見に対しても効果が得られた.したがって,本教材は生物教育および地域貢献の双方で,有用性の高い教材であることが明らかとなった.

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© 2021 一般社団法人 日本生物教育学会
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