乱獲や生息地破壊,人間の適度な関わりの低下,化学物質や外来生物,大規模な気候変動など,人間活動による生物多様性の低下が指摘されるようになり,高等学校生物における生物多様性と生態系に関する教育の重要性が増している.本研究では,「生物の多様性と生態系」の授業で用いることのできる「淡水魚類の生物多様性」教材を開発した.まず,埼玉県川越市の新河岸川をフィールドワークの調査地に設定し,3季136回の魚類採捕調査・環境調査を行った.各回の調査では,調査区間ごとの魚類(種名・個体数),環境(水温・水深・流速・水際植生の割合)のデータを記録し,教材用データセットとして整理した.高等学校において本教材を用いた授業実践を行った結果,学習者は平均値,分散,標準偏差,箱ひげ図,散布図,相関係数など適切な統計学的方法を用いて仮説検証を行った.今後は,本教材を用いた授業実践を行い,環境教育,生態学,統計学の3つの領域と,探究型授業の教材としての学習効果を検討していく予定である.