2022 年 64 巻 1 号 p. 9-21
現在高等学校で学習する「生物」では,バイオテクノロジーに関する内容を学習することになっている.これらの実験は行う必要があると考えている教員が多いにもかかわらず,「実験機器や試薬がない」,「授業時間が足りない」,「予算が足りない」といった理由からアンケートに回答した教員の20%程度しか実施されていないことが筆者の調査から明らかになっている.そこで本研究では大腸菌の形質転換,PCR,電気泳動について,実験の実施を妨げている上記の問題を解消し,関連性を持って連続的に実験できるような教材開発を試みた.その結果できるだけ身近な材料を用い,安価で授業時間内に実験を行うことのできる教材を開発することができた.また,開発した教材を用いて授業実践を行い,授業で用いた際の効果や,生徒の学力定着の状況を実践後のアンケートにより調査した.実際に授業で活用した結果,概ね授業でも問題なく実験ができ,結果も得ることが出来た.さらに70%以上の生徒が好意的な感想を述べていたが,手動PCRなどでいくつかの改善点も見つかった.学力の定着状況の調査では,実験を実施していない生徒と比較することで,教材の有効性を調べた.アンケート結果より,実験を実施した生徒の正答率が未実施の生徒の正答率を上回ったため,今回開発した教材で実験を実施することは,生徒の学力定着に寄与すると考えられる.