2023 年 64 巻 2 号 p. 133-139
遺伝子組換え技術を用いてGFPの遺伝子を取り込んだカイコの乾繭を高等学校の授業に活用した実験が開発されつつあるが,高温で煮繭し繰糸を行うと,蛍光タンパク質が熱によって変性してしまう.その変性を防ぎつつ,短い授業時間で生徒がGFP繭を繰糸するのは未だに困難であった.このような背景から,短い授業内でも実施でき,高温にさらすこともない新しい繰糸方法の開発を目指し,検討を行った.その結果,重曹ON法によって,繭の中に液体が入り,繰糸するのに絶妙な状態になっていることを発見した.本法を用いてGFP繭を処理し繰糸したところ,GFP繭の蛍光を失うことなく繰糸できた.そこで,教育実践として高校3年生に実施したところ,重曹ON法によるGFP繭の繰糸は,生徒による成功率が高かった.本法は,短い授業時間でも実施でき,絹などについて興味を持つ教材となることが分かった.