本研究は,日本とフィンランドの小学校理科(生活科を含む)教科書における生物分野(生命科学領域)について,その特徴を比較分析したものである.まず,先行研究に基づき,両国の教科書の各単元(章)にある「問い」を13観点から抽出し,問いに対する「解」の内容を4カテゴリーに分類した.また,両国の教科書に記載されている学習内容,特に生物の種や自然環境に関する内容を抽出し,それぞれ比較分析を行った.
その結果,両国では小学校生物教育の方法や自然環境へのアプローチについて大きな違いがあるだけでなく,明確な解を求める「問い」が多い日本の教科書に対して,フィンランドは,「なぜ・どうして?」といった疑問に対するオープンエンドな問いが多いことが明らかになった.
これは,フィンランドが「多様性のある解」や「個人の経験や知識に基づく解」を重視するものと考えられ,国が目指す7つのキーコンピテンシーとも一致する.今後,日本におけるコンピテンス基盤型生物教育を考える上で,大きな示唆を含むものと考えられる.
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