2023 年 64 巻 3 号 p. 177-184
本研究では,遺伝学を学ぶ上で不可欠な概念である「塩基の置換,挿入及び欠失」といった突然変異を学ぶ題材として,イネ(Oryza sativa L.)の胚乳のアミロース含有量に影響するWx遺伝子と,イネの胚乳の形状が長粒か短粒かの決定に関与するGW5遺伝子を題材とし,DNA解析の実験教材の開発を試みた.それぞれの遺伝子多型を検出するために,DNA抽出方法とPCR法の条件を検討し,精米を材料にコンタクトレンズ用のタンパク質分解酵素を用いた簡易なDNA抽出と,遺伝子多型を検出するプライマーを新たに設計し付け加えてPCR法による増幅,電気泳動法を行った.その結果,突然変異によるDNAの塩基配列の違いを可視化できることが明らかになった.このプロトコルを基に高校生を対象に授業で実践したところ,学習を通して,突然変異による形質の変化や多様化の認識,新たな疑問の生成が促されたことが示唆された.