生物教育
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研究資料
食品の分解をモデルとした中・高等学校用の微生物による有機物分解に関わる培養教材の開発
鈴木 彰君塚 正太福田 達哉
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2023 年 64 巻 3 号 p. 185-196

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抄録

本研究は,中学校の理科第2分野と高等学校の[生物基礎]の微生物による有機物分解に関わる単元で利用可能な,食品の分解をモデルとした体験教材の開発を目的として以下の実験を実施した.無菌操作下で,17種類の食品(加工食品と青果)の断片を,それぞれ,貧栄養寒天平板培地[素寒天培地および10倍希釈PDA培地(1/10 PDA)]に設置直後,パラフィルムでペトリ皿を封じて培養する一連の実験と,食品片の設置直後にペトリ皿の蓋を30秒間開けて空中落下菌を捕集(暴露)直後,パラフィルムでペトリ皿を封じて培養する一連の実験を,20°Cで24日間に渡って実施した.暴露の有無は,大部分の供試食品上での細菌とかびの増殖にはほとんど影響を与えなかった.貧栄養寒天培地による培養では,食品片上での細菌やかびの増殖が比較的抑制され,食品片由来の細菌とかびの増殖経過と食品片の分解経過を,ペトリ皿の蓋を開けずに,培養2–5日目から,17日間以上に渡って継時観察可能であった.大部分の青果を用いた培養では細菌とかびが旺盛に増殖した.一方,動物性加工食品を用いた培養では細菌が優越して増殖した.以上のことから,本培養系は,教員が無菌平板培地さえ準備すれば,生徒による,食品片の作製及び同食品片の寒天平板培地上の設置に厳密な無菌操作を要求せず,培養中,ペトリ皿の蓋をとらずに観察が可能なため,安全に実施可能な微生物による動物質と植物質有機物分解の動態の継時観察に適する中・高等学校用の分解モデル教材と判断した.

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© 2023 一般社団法人 日本生物教育学会
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