生物教育
Online ISSN : 2434-1916
Print ISSN : 0287-119X
64 巻, 3 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
研究報告
  • 内山 智枝子, 宇田川 麻由, 青木 啓太, 深谷 将, 武村 政春
    2023 年 64 巻 3 号 p. 177-184
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,遺伝学を学ぶ上で不可欠な概念である「塩基の置換,挿入及び欠失」といった突然変異を学ぶ題材として,イネ(Oryza sativa L.)の胚乳のアミロース含有量に影響するWx遺伝子と,イネの胚乳の形状が長粒か短粒かの決定に関与するGW5遺伝子を題材とし,DNA解析の実験教材の開発を試みた.それぞれの遺伝子多型を検出するために,DNA抽出方法とPCR法の条件を検討し,精米を材料にコンタクトレンズ用のタンパク質分解酵素を用いた簡易なDNA抽出と,遺伝子多型を検出するプライマーを新たに設計し付け加えてPCR法による増幅,電気泳動法を行った.その結果,突然変異によるDNAの塩基配列の違いを可視化できることが明らかになった.このプロトコルを基に高校生を対象に授業で実践したところ,学習を通して,突然変異による形質の変化や多様化の認識,新たな疑問の生成が促されたことが示唆された.

研究資料
  • 鈴木 彰, 君塚 正太, 福田 達哉
    2023 年 64 巻 3 号 p. 185-196
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/18
    ジャーナル フリー

    本研究は,中学校の理科第2分野と高等学校の[生物基礎]の微生物による有機物分解に関わる単元で利用可能な,食品の分解をモデルとした体験教材の開発を目的として以下の実験を実施した.無菌操作下で,17種類の食品(加工食品と青果)の断片を,それぞれ,貧栄養寒天平板培地[素寒天培地および10倍希釈PDA培地(1/10 PDA)]に設置直後,パラフィルムでペトリ皿を封じて培養する一連の実験と,食品片の設置直後にペトリ皿の蓋を30秒間開けて空中落下菌を捕集(暴露)直後,パラフィルムでペトリ皿を封じて培養する一連の実験を,20°Cで24日間に渡って実施した.暴露の有無は,大部分の供試食品上での細菌とかびの増殖にはほとんど影響を与えなかった.貧栄養寒天培地による培養では,食品片上での細菌やかびの増殖が比較的抑制され,食品片由来の細菌とかびの増殖経過と食品片の分解経過を,ペトリ皿の蓋を開けずに,培養2–5日目から,17日間以上に渡って継時観察可能であった.大部分の青果を用いた培養では細菌とかびが旺盛に増殖した.一方,動物性加工食品を用いた培養では細菌が優越して増殖した.以上のことから,本培養系は,教員が無菌平板培地さえ準備すれば,生徒による,食品片の作製及び同食品片の寒天平板培地上の設置に厳密な無菌操作を要求せず,培養中,ペトリ皿の蓋をとらずに観察が可能なため,安全に実施可能な微生物による動物質と植物質有機物分解の動態の継時観察に適する中・高等学校用の分解モデル教材と判断した.

  • 新井 しのぶ, 橋本 一雄, 大和 孝子, 野上 俊一
    2023 年 64 巻 3 号 p. 197-202
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/18
    ジャーナル フリー

    2030年までに達成するべき持続可能な開発目標(SDGs)の「飢餓をゼロに:飢餓を終わらせ,食料安全保障及び栄養改善を実現し,持続可能な農業を促進する」を達成するために,「昆虫食」の可能性が論じられている.昆虫食が注目される理由として,昆虫は栄養価が高いだけでなく,カロリーも高いことから,地球規模での飢餓を減らす可能性が示唆されている.今後の人口増加や農業環境の問題から,昆虫食は持続可能な目標達成の可能性の一つとなりえるが,現状としては,昆虫食の習慣は世界においても減少してきている.このような現状から,昆虫食が食糧問題の解決手段の一つとされるためには,まず学校教育において昆虫食について考え,そして知る活動があるべきだと考えた.そこで,本研究では,大学生を対象として,昆虫食を体験し,かつ昆虫食について考えることができる,開講科目「理科実験B」にて行われた昆虫の観察と昆虫食の体験を組み合わせた活動を行ったので報告する.

  • ―幼児の疑問に着目して―
    田川 一希
    2023 年 64 巻 3 号 p. 203-209
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/18
    ジャーナル フリー

    幼児が一般的に興味を持ちやすい生物の分類群や特徴の把握は,保育者養成における生物に関するカリキュラム構築の一助となる.本研究では,保育者への質問紙調査をもとに3~5歳児の生物に関する疑問を収集した.得られた疑問292件の内容を分析することで,幼児の生物への興味の実態把握を試みた.幼児の疑問には,ダンゴムシやチョウ,セミなど,身近な自然環境で観察できる小型の生物が多く出現した.出現する分類群としては昆虫が約30%で最も多く,植物,甲殻類がこれに続いた.分類群の割合に年齢の影響は確認されなかったが,男児の疑問には昆虫,女児の疑問には植物・ヒトが一方の性と比較してより多く見られる傾向にあった.幼児の疑問に出現した生物の特徴として最も多い項目は,動物の行動であった.疑問を通して求める情報のタイプは「なぜ」「どうして」といった疑問詞と共に用いられる説明的情報が60%以上を占めた.

特集 第107回全国大会シンポジウム
特集 第107回全国大会特別セッション
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