心拍変動 (heart rate variability : HRV) は心臓に対する自律神経調節を反映し, これまでに精神生理学および関連分野において広く利用されてきた. 本稿はHRVの高周波 (HF) 成分と低周波 (LF) 成分に焦点を当て, 自律神経活動との関係, 心肺系休息機能, HRVバイオフィードバック (HRVBF) の治療効果について概説した. HRVの分析は心肺系休息機能の評価のための有用なツールとなるため, 今後, 心理生理的適応の維持や改善を目的としたHRV利用が日常場面 (学校や職場など) に拡がっていくことが期待される. 一方で, HRV計測や評価に関わる技術の進歩も予想される. 結果的に, HRVやHRVBFに関する適切な知識の普及についての責任も増してくるだろう. このため, 休息機能向上の機序に関連したHRV研究が今後さらに必要である.