バイオフィードバック研究
Online ISSN : 2432-3888
Print ISSN : 0386-1856
原著
スピーチ場面におけるVRおよび現実エクスポージャーの社交不安に対する心理的指標の比較
渡邉 美紀子城月 健太郎牛場 貴則三淵 啓自種市 摂子中尾 睦宏
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2023 年 50 巻 2 号 p. 71-79

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抄録

【目的】近年,不安症に対するバーチャルリアリティエクスポージャー(VREX)の研究が進んでいる.本研究ではスピーチ場面のVREXと現実エクスポージャー(IVEX)について,不安の喚起,社交不安への影響の2点について比較検討した.

【方法】大学生および大学院生23名(VREX群11名,IVEX群12名)が参加者であった.参加者は,3分間のスピーチ課題を2回行った.2回目は自分のパフォーマンスを撮影した映像を視聴する,ビデオフィードバック(VF)を行った.スピーチ課題について,VREX群は,ヘッドマウントディスプレイを着用し,360度の実写動画で作成された,仮想現実内にいる男性司会者に向かってスピーチを行った.IVEX群は,カメラに向かってスピーチした.不安の喚起については,主観的不安のSUDS値を従属変数として,群と時期の2要因の分散分析を実施した.社交不安への影響については,スピーチ課題に対する否定的な見積もり(Speech Estimation Scale)と,自己評価(日本語版Speech Perception Questionnaire)を従属変数として,群と時期の2要因の分散分析を実施した.

【結果】不安の喚起について,課題の1回目,2回目共に,群と時期の交互作用は認められなかったが,時期に対する主効果が認められた.社交不安の影響については,どちらも,群と時期の交互作用は認められなかったが,時期に対する主効果が認められた.

【考察】どちらのエクスポージャーも不安を喚起させたが,IVEXと比べて,VREXの方がやや不安の上昇はゆるやかであった.また,VFと組合せた場合,社交不安への影響は,IVEXの方が大きかった.VREXの臨床場面での応用可能性に関しては,IVEXへの導入や,コ・メディカルによる実施の可能性などの点ついて議論された.

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© 2023 日本バイオフィードバック学会
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