バイオフィードバック研究
Online ISSN : 2432-3888
Print ISSN : 0386-1856
50 巻, 2 号
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原著
  • 渡邉 美紀子, 城月 健太郎, 牛場 貴則, 三淵 啓自, 種市 摂子, 中尾 睦宏
    2023 年 50 巻 2 号 p. 71-79
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル フリー

    【目的】近年,不安症に対するバーチャルリアリティエクスポージャー(VREX)の研究が進んでいる.本研究ではスピーチ場面のVREXと現実エクスポージャー(IVEX)について,不安の喚起,社交不安への影響の2点について比較検討した.

    【方法】大学生および大学院生23名(VREX群11名,IVEX群12名)が参加者であった.参加者は,3分間のスピーチ課題を2回行った.2回目は自分のパフォーマンスを撮影した映像を視聴する,ビデオフィードバック(VF)を行った.スピーチ課題について,VREX群は,ヘッドマウントディスプレイを着用し,360度の実写動画で作成された,仮想現実内にいる男性司会者に向かってスピーチを行った.IVEX群は,カメラに向かってスピーチした.不安の喚起については,主観的不安のSUDS値を従属変数として,群と時期の2要因の分散分析を実施した.社交不安への影響については,スピーチ課題に対する否定的な見積もり(Speech Estimation Scale)と,自己評価(日本語版Speech Perception Questionnaire)を従属変数として,群と時期の2要因の分散分析を実施した.

    【結果】不安の喚起について,課題の1回目,2回目共に,群と時期の交互作用は認められなかったが,時期に対する主効果が認められた.社交不安の影響については,どちらも,群と時期の交互作用は認められなかったが,時期に対する主効果が認められた.

    【考察】どちらのエクスポージャーも不安を喚起させたが,IVEXと比べて,VREXの方がやや不安の上昇はゆるやかであった.また,VFと組合せた場合,社交不安への影響は,IVEXの方が大きかった.VREXの臨床場面での応用可能性に関しては,IVEXへの導入や,コ・メディカルによる実施の可能性などの点ついて議論された.

シンポジウム
  • 及川 欧, 木賊 弘明, 榊原 雅人
    2023 年 50 巻 2 号 p. 81-94
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル フリー

     本シンポジウムは,前回の日本バイオフィードバック学会学術総会での発表に引き続き,国際交流委員会の自主シンポジウムとして英語で開催された.講師3名がそれぞれの立場から,“professionalism” についての考え方を示し,またコロナ禍中でも開催された東京2020で繰り返された “legacy(次世代に遺していくべき遺産)” という言葉についての話題提供が行われた.榊原氏は心拍変動バイオフィードバックの研究を始めたEvgeny Vaschillo博士への追悼の意味合いを込め,彼が初期にロシアで行った実験を紹介した.特に心臓系血管系の共鳴現象と共鳴周波数のペース呼吸の効果について解説し,その先駆的な研究知見が現在のapplied psychophysiologyのlegacyになっていることを指摘した.木賊(とくさ)氏はもともと国体選抜の自転車競技選手だったが,重傷の怪我をきっかけに競技生活から離れた.そこから資格を取って作業療法士になり,競技者が怪我しないために,あるいは怪我に打ち克つために,どのようなノウハウを身に着けていくべきかについて,脳科学に関する各種研究を用いて理論的に次世代の競技選手の育成に応用している.一つのprofessionalismから別領域のprofessionalismに移行する際に,どのような苦難を乗り越え,工夫をしながらその英知をlegacyとして遺すのかについて語った.及川は,主に脳神経内科と心療内科の2つの領域で心身両面からの診療アプローチを長年臨床応用してきた.研究テーマの一つである,心拍変動バイオフィードバック(HRV-BV)を,現在所属しているリハビリテーション領域でどのように解釈して用いているのか,また近年取り組んでいる「障がい者を含むスポーツ領域」で,どのように心身両面からのアプローチを応用しているのかについて語った.

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