バイオフィードバック研究
Online ISSN : 2432-3888
Print ISSN : 0386-1856
シンポジウム
プロフェッショナリズムとレガシー;東京2020でわれわれは何を学び,コロナ禍以降のバイオフィードバックはどこを目指すのか
及川 欧木賊 弘明榊原 雅人
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2023 年 50 巻 2 号 p. 81-94

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抄録

 本シンポジウムは,前回の日本バイオフィードバック学会学術総会での発表に引き続き,国際交流委員会の自主シンポジウムとして英語で開催された.講師3名がそれぞれの立場から,“professionalism” についての考え方を示し,またコロナ禍中でも開催された東京2020で繰り返された “legacy(次世代に遺していくべき遺産)” という言葉についての話題提供が行われた.榊原氏は心拍変動バイオフィードバックの研究を始めたEvgeny Vaschillo博士への追悼の意味合いを込め,彼が初期にロシアで行った実験を紹介した.特に心臓系血管系の共鳴現象と共鳴周波数のペース呼吸の効果について解説し,その先駆的な研究知見が現在のapplied psychophysiologyのlegacyになっていることを指摘した.木賊(とくさ)氏はもともと国体選抜の自転車競技選手だったが,重傷の怪我をきっかけに競技生活から離れた.そこから資格を取って作業療法士になり,競技者が怪我しないために,あるいは怪我に打ち克つために,どのようなノウハウを身に着けていくべきかについて,脳科学に関する各種研究を用いて理論的に次世代の競技選手の育成に応用している.一つのprofessionalismから別領域のprofessionalismに移行する際に,どのような苦難を乗り越え,工夫をしながらその英知をlegacyとして遺すのかについて語った.及川は,主に脳神経内科と心療内科の2つの領域で心身両面からの診療アプローチを長年臨床応用してきた.研究テーマの一つである,心拍変動バイオフィードバック(HRV-BV)を,現在所属しているリハビリテーション領域でどのように解釈して用いているのか,また近年取り組んでいる「障がい者を含むスポーツ領域」で,どのように心身両面からのアプローチを応用しているのかについて語った.

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© 2023 日本バイオフィードバック学会
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