2025 年 52 巻 2 号 p. 61-66
心身症治療において,患者と医療者で病態を共有することは非常に重要である.今回,心身症の病態共有としてバイオフィードバック(BF)を用いたところ,良好な経過を得られた2症例を検討する.症例1は,40歳台後半の男性.腹痛を主訴に受診した.8年前から腹痛を自覚し,精査を受けるも,症状の原因となる器質的な異常所見を認めず,当科紹介受診となった.診察にて空気嚥下症を疑い,胃機能を生理指標として硫酸バリウムの内服前後でレントゲン撮影を行ったところ,内服前後で胃内の空気が著明に増加していた.画像供覧しながらフィードバックを行ったところ,症状の原因となりうる機能的病態が視覚的に理解できたことで安心感が得られた.以降,別の症状に対し継続診療を行っているが,腹部症状は訴えなくなった.症例2は,50歳台後半の男性.のどがつかえて声が出にくいことを主訴に受診した.3年前から話しにくさを自覚し,精査にて症状の原因不明であったため,X年10月当科紹介受診となった.安静時およびストレス負荷時の生理指標を評価したところ,ストレス負荷に伴う眼輪筋の著明な筋電位上昇と,同じタイミングでの自覚症状増強を認め,僧帽筋筋電位のストレス負荷に対する反応性低下を認めた.筋緊張が症状に影響していることをフィードバックし,運動療法が有用であることを説明すると,安心感と自身で症状に対処できる自信が生じ,当科の継続受診は不要となった.これまでの検査で器質的な原因が不明だった機能性の症状に対し,胃機能や筋電図,皮膚温を生理指標として機能面から症状を可視化したことが,患者の安心感や自己効力感の向上につながり,病態全体の改善につながった.BFによる症状のコントロールだけでなく,可視化することが心身医学的アプローチとして有用であった.