2025 年 52 巻 2 号 p. 51-60
近年,予防的健康アプローチが注目される中,アクティビティトラッカー(AT)を用いた健康管理が期待されている.
本研究は,健常者を対象に,ATによるバイオフィードバックが身体活動,心理面,健康・睡眠の質への関心に与える影響を調査した.参加者にはAT装着下での生活を送ってもらい,歩数,心拍数,睡眠時間,睡眠効率などの生体信号データを取得した.調査は2週間毎,計5回(Period 1~5)期間で実施され,最終的に11名(平均年齢42.9±12.1歳)のデータを分析した.生体信号データ(心拍数,歩数,睡眠時間,睡眠効率)はFitbit社のWeb APIを利用して取得し,心理指標として主観的幸福感(SHS)と主観的ストレス(K10)についてのアンケート調査も実施した.調査終了時には,健康および睡眠の質への関心の変化について質問紙にて聴取した.分析の結果,Period 1(ベースライン)と比較して,他の全期間で平均歩数に有意な増加が認められた.一方,平均睡眠時間については期間による有意差は認められなかった.K10では,研究開始時に比べ研究終了時にはカットオフ値以上の参加者が減少した.また,健康への関心度は81.8%,睡眠の質への関心度は100%の参加者が増加したと回答した.
本研究の結果から,ATを用いたバイオフィードバックは,睡眠時間や心理指標への直接的な影響は明確ではなかったものの,歩数の増加,健康・睡眠への意識向上に貢献する可能性が示唆された.一方で,AT装着率が低い問題点も明らかとなり,より簡便なデバイスの必要性が示唆された.