抄録
本研究では、行動変容の準備性に注目したトランスセオレティカルモデル(Transtheoretical Model: TTM)を適用して、健康診査(健診)・検診受診行動の変容ステージにおける分布を明らかにし、健診・検診受診行動と健診・検診受診行動に関する意思決定のバランス(行動を変容させることに伴う恩恵と負担に対する評価のバランス)との関連を検討した。無記名の郵送法による横断的質問紙調査を行い、40歳以上の男女503名を分析対象者とした。その結果、対象者の6割が健診・検診を定期的に受診している維持期に属していた。また逆戻りリスク期以外においては健診・検診受診行動の変容ステージが高い対象者ほど恩恵の評価が高くなり、負担の評価が低くなることが明らかになり、一般的なTTMの理論的枠組みと一致した。以上のことから、行動の変容ステージや行動に関する恩恵や負担に注目することは重要であり、TTMを利用して健診・検診を受診することを促すアプローチを考えていくことが期待される。