抄録
わが国の労働者の健康に対してストレスの悪影響は大きいため、国や事業場は様々な対策を講じている。事業場は、ストレスレベルのチェックやストレス理解を促す研修会を実施しており、現在多くの労働者がストレスレベルのチェックや研修会へ参加するようになっている。しかし、彼らがストレスチェックや研修会へ参加することが、その後のセルフケアの実施に結びついていないことが問題である。この理由として、筆者らは、労働者各個人の「ストレスの捉え方の傾向」の個人差が影響していると仮説を立てた。すなわち、ストレスレベルの自己評価は、ストレス対処行動を生じさせるために必要な最初の段階である。体験しているストレスのレベルやストレス・マネジメントの重要性を過小評価しやすい態度を持っている者は、十分なストレス対策を実施しないであろうと考えられる。本稿では、現在までの研究のうち、ストレス性疾患である急性心筋梗塞患者を対象としたストレスの捉え方の質的研究、労働者を対象とした量的研究をそれぞれ紹介する。一連の研究結果を応用し、本人の「ストレスを過小評価する傾向」の要因を追加することで、ストレスチェックやメンタルヘルス研修の効果をより高めることが期待される。