行動医学研究
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総説
運動器疼痛管理のための認知行動療法
―膝痛高齢者への痛み対処スキルトレーニングの応用―
岡 浩一朗
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2015 年 21 巻 2 号 p. 76-82

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要約

心理的要因(たとえば、痛み対処方略)が高齢者における運動器疼痛管理に重要な役割を果たすというエビデンスは増加している。それ故に、運動器疼痛管理のために認知行動療法(たとえば、痛み対処スキルトレーニング)を利用することへの興味・関心が高まっている。本稿では、まず初めに運動器疼痛管理における認知行動療法の必要性に関する背景について概観した。次に、痛み対処スキルトレーニングで使用される5つの主な技法(認知再構成、リラクセーション、ディストラクション、快活動の計画、活動ペース配分)に焦点を当てて解説した。さらに、日本人の膝痛高齢者に対する痛み対処スキルトレーニングおよび運動療法に活用するために新しく開発した2つの印刷教材を紹介した。最後に、この領域における研究の今後の方向性について議論した。本総説より、運動器疼痛管理に認知行動療法(痛み対処スキルトレーニング)を応用することの重要性が示された。

運動器の健康にまつわる諸問題

2014年における我が国の平均寿命は男性80.50歳、女性86.83歳であり、世界有数の長寿国である。しかしながら、平均寿命と健康寿命の間には、男性で約9年、女性で約12年の差があり、この差を生み出している要因の1つは運動器の障害と考えられる。平成25年国民生活基礎調査によると、要介護度別にみた介護が必要となった主な原因として、要支援者の場合は約35%、要介護者の約18%が、「骨折・転倒」あるいは「関節疾患」といった運動器の障害が挙げられる1)。また、同様の調査において、65歳以上の高齢者が訴える症状に関して、「腰痛」や「手足の関節の痛み」といった運動器の症状が上位を占め、高齢者の多くが運動器に問題を抱えていることが分かる1)。特に、運動器の加齢性疾患である変形性膝関節症などにより過去1か月間に少なくとも1日以上の持続的な膝痛がある高齢者の割合は、男性24.1%、女性37.6%にものぼる2)。さらに、わが国の大規模コホート研究の成果から、70歳以上の高齢者の95%以上は、運動器疾患に代表される変形性関節症または骨粗鬆症のいずれかの所見を有していると推定されている3)。これらの疾患は歩行障害や転倒・骨折と結びつく危険性が高く、医療費や介護費用等の社会保障費の増大にもつながる可能性がある。そのため、健康寿命の延伸を中心的課題としている「健康日本21(第二次)」では、その目標に運動器の健康に関する項目を掲げており4)、日本学術会議臨床医学委員会運動器分科会5)による「超高齢社会における運動器の健康―健康寿命延伸に向けて―」の中でも、運動器疾患対策に関して重要な6つの提言がなされている(Table 1)。運動器の健康に携わる領域の研究者は一致団結してこの重要な課題に取り組み、科学的根拠に基づく運動器の健康づくりに貢献していく必要がある。

Table 1. 超高齢社会における運動器の健康に向けた提言5)
提言 具体的な内容
運動器の健康の重要性に関する社会への啓発活動をすすめるべきである •運動器の健康の重要性に関する社会の認識が低い。国は、国民一人ひとりに運動器の健康の重要性を啓発し、人々の行動変容を促すための施策を講じる必要がある。
運動器学に関する学問の推進をはかるべきである •運動器の機能を維持することの重要性は、超高齢社会を迎えて明らかになった新しい課題である。運動器に関する包括的研究が重要である。•研究者は、包括的研究を推進するために、医学、薬学、看護学、スポーツ科学、栄養学、疫学などの広範な連携によって運動器学を確立していく必要がある。
健康寿命の延伸に向けた運動器学の総合的研究支援体制を構築すべきである •超高齢社会において、国民が健康で明るく元気に生活できる社会を構築するには、運動器の健康は必須の要件である。•国は、厚生労働省内に「運動器疾患対策室」を設け、運動器疾患・障害に特化した総合的研究事業を実施すべきである。また、新たにスタートする「(独)日本医療研究開発機構」構想にも「運動器研究分野」を設け、今後の健康立国日本の実現に向けて重点的に取り組む必要がある。
運動器の健康の指導を実践する人材の育成につとめるべきである •高齢化が進む日本において、運動器の健康に有用な運動療法を適切に指導する人材が必要である。国は、指導を実践する人材の候補となる医師、看護師、理学療法士、保健師、養護教員、健康運動指導士、健康運動実践指導者などに対する運動器教育を充実し、人材の育成につとめるべきである。
運動器検診に関するエビデンスを構築し、その実現を目指すべきである •運動器疾患・障害に対する効果的な検診の実現に向けて、国および地方自治体は、実施方法、予測される効果などについてのエビデンスを蓄積し、運動器検診の実施を目指すべきである。
運動器障害者(肢体不自由者)の身体活動低下に起因する健康障害の予防をはかるべきである •運動器障害者は生活活動・運動が制限され、身体活動量が低下し、メタボ、肥満などの健康障害を引き起こすことが多い。国は、運動器障害者の身体活動低下による健康障害を予防するための体制を構築すべきである。これには、障害者の健康チェック体制の整備、健診施設・医療施設のバリアフリー化の推進、障害者を対象とした運動・スポーツ指導者の能力開発、運動施設へのアクセスの改善などが含まれるべきである。

運動器の健康づくり、特に変形性膝関節症等による高齢者の慢性疼痛管理のために運動療法が奨励されており、複数のシステマティックレビューおよびメタアナリシスにより運動療法の短期的効果が示されている6, 7)。しかしながら、運動アドヒアレンスの低さが問題となっており、介入後6か月以上持続する長期的効果を明らかにした研究は少ない8)。この原因の1つとして、慢性膝痛を有する高齢者は、痛みを過度に脅威だと感じたり、過剰に鎮痛薬を使用したり、ずっと横になって過ごすといった不適切な対処方略を選択してしまうことや、恐怖心、抑うつ症状といった認知・行動・感情の問題を抱えている場合が多く、その結果、痛みの悪化や活動制限が助長される悪循環に陥ってしまうことが挙げられる9)。このような、運動器の慢性疼痛管理に伴う諸問題を有する高齢者を包括的に理解し解決するための手段として、認知行動療法が注目されている。

認知行動療法は「個人の行動と認知(対処可能性、信念、考え方、構えなど)に焦点を当て、そこに含まれる行動、認知、感情や情緒、身体、そして動機づけの問題を合理的に解決するために計画された構造化された治療法であり、自己理解に基づく問題解決とセルフ・コントロールに向けた教授学習のプロセス」である10)。疼痛管理を目的とした場合、疼痛刺激に対して対象者がそれをどのように理解し、そこで何を考え、どのように振る舞っているのかを問題とする。疼痛に対して対象者の考えていることがどのような意味を持っているかを考え、またどのような動機づけや感情の問題を抱え、身体の変化が出ているかを整理し、日常生活を送る中での対処方法を学ぶことができるよう援助を行うという発想である。したがって、対象者が問題への対処方法やセルフ・コントロールの方法を習得するということが目的の1つとして挙げられる。適切に行うことで痛みの問題を認知の問題としてとらえることができ、自分自身の認知をモニタリングし、その変化に気づきやすくなるため、疼痛管理の一助となることが期待できる11)

運動器疼痛管理に有用な認知行動療法

運動器疼痛管理において特に注目されてきた要因の1つとして「痛み対処方略(pain coping strategy)」がある。痛み対処方略とは「個人が痛みという不快な状況を改善するために行う様々な努力」を指す。たとえば、慢性膝痛を抱える中高齢女性を対象にした野呂らの研究12)では、膝に強い痛みを感じている人ほど、願望思考(早く痛みがなくなるようにと願う)、破滅思考(自分の痛みに対する絶望感や諦め)、医薬行動(必要以上に薬に頼る)といった痛み対処方略を頻繁に採用し、その結果として膝痛による活動制限が強められていることが明らかになった。また、Rappら13)も膝痛高齢者の機能障害や運動機能の低下には、願望思考や破滅思考、思考回避(あたかも痛みの感覚がないかのように考える)、無視(痛みを否定し、無視する)といった不適応的な対処方略の採用が関与することを報告している。さらに、痛み対処方略の中でも破滅思考は特に注目されており、膝痛を有する中高齢者を対象にした先行研究では、破滅思考が強いほど痛みを強く感じ14)、痛みに対する感受性(痛みを感じる閾値)も低く15)、痛み行動や機能障害の問題を抱えている16)ことが指摘されている。

運動器疼痛管理を促す認知行動療法のエビデンスに関して、Dixon ら17)は、関節症(変形性関節症、関節リウマチ)により痛みを有する成人への心理的介入の効果について検討した研究についてメタアナリシスを実施している。その結果、心理的介入群は対照群に比べて、痛み(効果サイズES=0.177)や機能障害(ES=0.152)、不安(ES=0.282)、抑うつ(ES=0.208)に効果を認めており、特に分析に用いた27研究のうち、23研究(70%)は認知行動療法に基づく「痛み対処スキルトレーニング」を採用していた。痛み対処スキルトレーニングは、①痛みと認知・行動・情緒的な問題との関係性への理解を促す、②痛みに効果的に対処するスキルを学ぶ、③痛み対処スキルを日常場面で応用するトレーニングを行う、といった内容で構成される場合が多い18, 19)Table 2には、運動器疼痛管理のための痛み対処スキルトレーニングに用いられる主な技法の内容および具体例をまとめた20)

Table 2. 運動器疼痛管理のための認知行動療法の例20)
技法 内容 具体例
認知再構成 疼痛経験をネガティブに捉えてしまう思考過程を、前向きで現実的な別の考え方に修正する 疼痛が生じたときに「何ができるか考えよう」と肯定的に考える
視覚イメージ法 目を閉じて、自分の気持ちが落ち着く情景を想像する 自然の風景をイメージする
ディストラクション 疼痛に過剰に注目しすぎないように、痛み以外の刺激に注意を向ける テレビを観る、本を読む
漸進的筋弛緩法 筋の収縮・弛緩のメカニズムを利用し、特定の筋群を弛緩させる 椅子に楽な姿勢で座り、肩や腕、足など身体の部位に5秒間力を入れ、緩める
疼痛教育 疼痛についての教育を受け、理解を深める 専門家の講義を受ける
快活動の計画 楽しい活動の予定を立てる 旅行の予定を立てる ウォーキングコースにお気に入りの場所を入れる
活動ペース配分 時間を考慮した活動のペース配分を行う 活動時間を痛みが始まる時間よりも短い時間に設定する
モデリング法 疼痛を抱えている他者が努力しているのを参考にして学習する 運動などにより疼痛の緩和ができている人の話を聞いたり、付き合うようにする

中楚ら21)は、膝痛高齢者の疼痛管理における認知行動療法の有効性について検討した17編のランダム化比較試験についてシステマティックレビューを行っている。Table 3には、各研究において使用された認知行動療法の技法を整理している。特に、「認知再構成」、「リラクセーション(視覚イメージ法、漸進的筋弛緩法)」、「ディストラクション」、「快活動の計画」、「活動ペース配分」といった技法が採用されていた。以下は、これらの研究で多く用いられた技法の概要について解説する。

Table 3. 膝痛高齢者への介入で使用された認知行動療法の技法21)

1. 認知再構成

痛み経験は、不適切な思考につながる場合が多い。特に問題となってくる思考として「破滅思考」が挙げられる。具体的には、何度も痛みについて考えてしまうこと(反芻)、痛みをより大げさにとらえて考えてしまうこと(拡大視)、痛みに対してどうすることもできないと考えてしまうこと(無力感)などである。このように思考してしまうことは、日常生活や社会活動にも悪影響を及ぼし、活動性の低下が助長される可能性がある。認知再構成はこのような痛みに対するネガティブな思考がどのような影響を与えるかを整理し、客観視することで、痛みへの捉え方を修正していこうとするものである。より前向きな思考へと変容することで、痛み対処セルフ・エフィカシーも高まる可能性がある。

2. リラクセーション

痛みを有する高齢者は、痛みへ注意を向けるあまり筋緊張が亢進することや、交感神経優位となるような身体所見を呈している場合がある。このような状態が続くと、痛みのさらなる増悪や活動性の低下につながりやすい。このような場合には、漸進的筋弛緩法、呼吸法、視覚イメージ法などのリラクセーション技法を用いることが有効である。漸進的筋弛緩法は、筋の収縮・弛緩のメカニズムを利用し、特定の筋群の弛緩効果を狙って行っていく。また、腹式呼吸や深呼吸といったリラクセーション効果が得られる呼吸法に習熟することも対処方略の1つとなる。また視覚イメージ法とは、目を閉じて、自分の一番気持ちが落ち着く情景などを具体的に想像することでリラクセーション効果を得る手法である。必ずしもすべての技法に習熟する必要はなく、自身にあったリラクセーション技法を対処方略の1つとして身につけることが肝要である。

3. ディストラクション

テレビを観る、本を読むなど、痛み以外の刺激に注意を向けさせることをディストラクションという。慢性疼痛を抱える高齢者の中には、自分自身が普段からディストラクションを用いていることに気づいていない場合がある。日常生活で実行しているディストラクションに注意を向け、新たなディストラクションの方法を増やすためにも、実際にディストラクションを行わせ、モニタリングさせることによって痛みの変化を実感させることが重要である。また、痛みが生じたときに「願っても痛みは改善しない。痛みを和らげられるために自分に何ができるか考えよう」といった肯定的で適応的な考えを繰り返す自己陳述も有効である。

4. 快活動の計画

痛みに向き合い、活動性を維持・向上させるということは疼痛管理における1つの目標と言えるが、高齢者にとって、あまりやりたくない活動ばかりを指導されることは、受け入れが悪い場合がある。そのための方略として、楽しい活動を考えて、そこから活動性を上げていくことも重要である。楽しい活動(たとえば、お茶を飲みながら、友人とお喋りなど)をしているときは、案外痛みのことを忘れていることも多い。また、楽しい活動について思いつくことができない高齢者もいるため、あらかじめ様々な活動のリストを用意し、楽しい活動を見つけ出すことを支援することも必要である。そして、セルフ・モニタリング、目標設定、活動ペース配分といった技法も組み合わせて具体的に予定に組み込んでいき、徐々に活動性を上げていくことが有用である。

5. 活動ペース配分

高齢者の中には運動を頑張りすぎて、次の日に痛みが増加し、その後の身体活動の量や頻度が減少する場合もあるため、時間を考慮した適切なペース配分を指導することも必要である。活動時間を痛みが始まる時間よりも短い時間に設定し、休息時間の大切さも強調することが重要である。また、活動の種類によってペース配分は異なることも認識すべきである。さらに、最初に見積もったペース配分が適切であるとは限らないため、適宜見直しを行い、修正していくことにも注意が必要である。

膝痛高齢者の疼痛管理プログラムに活用する教材開発の試み

近年、膝痛高齢者に対して運動療法と認知行動療法を組み合わせた介入プログラムの効果をRCTにより検証した研究が散見されるようになった。たとえば、変形性膝関節症患者を対象にしたKeefeら22)は、運動療法に加えて配偶者支援による痛み対処スキルトレーニングを実施することにより、有酸素性体力や筋力といった身体機能の改善のみならず、痛み対処方略や痛み対処セルフ・エフィカシーにも効果が認められることを明らかにしている。また、Somersら23)の研究では、過体重・肥満の変形性膝関節症患者に対して、痛み対処スキルトレーニングと体重管理のための行動介入 (運動療法を含む)を統合したプログラムを実施することにより、膝痛や痛み対処方略(特に破滅思考)が改善するとともに、BMIにも有意な減少が認められている。一方、我が国では変形性膝関節症を有する地域在住高齢者に対する運動療法の有効性を明らかにした研究24)はみられるが、痛み対処スキルトレーニングのような認知行動療法と運動療法を組み合わせたような包括的な疼痛管理プログラムはこれまで十分に開発されてこなかった。

前述したような認知行動療法を活用した運動器疼痛管理、特に高齢者に向けたプログラムを作成する際の注意点として、Keefeら25)は、①プログラムの意義を対象者に明確に伝えること、②対象者が練習を十分に行えるようにすること、③記憶の必要性を少なくするために印刷媒体等を用いた宿題を設定することの重要性を強調している。これらの指摘を踏まえるとともにこの分野の先行研究の取り組みを参考に、我が国における膝痛高齢者に対する疼痛管理プログラム実施の際に活用すべく、痛み対処スキルトレーニングおよび運動療法を円滑に進めるための印刷教材の開発を試みた(Fig. 1)。特に、痛み対処スキルトレーニング用である「いたとも手帳」の具体的な内容は、痛みと上手に付き合うコツと題して、リラクセーション(呼吸法、筋弛緩法)、認知再構成、快活動の計画とペース配分といった3つの技法を中心に構成した。また、「とびら理論」による痛みの生じるメカニズムの解説や「痛みの真実」といった一問一答クイズを盛り込むことにより痛みについての理解を深めるとともに、「いたとも日記」による痛みや気分・感情・考え方のモニタリングができるようにした。一方、運動療法用の「いいひざ手帳」に関しては、実行すべき具体的な運動のポイントを示す内容に加えて、運動の習慣化形成を促すために目標設定やセルフ・モニタリング等の技法に基づいた「運動日記」を盛り込んでいる。現在は、地域在住の膝痛高齢者を対象に運動療法と痛み対処スキルトレーニングを組み合わせた包括的プログラムを実施する中で、これらの印刷教材を有効活用し、その効果検証を行っているところである。

Fig. 1.

運動器疼痛管理プログラムに活用する印刷教材の例(左:痛み対処スキルトレーニング用;右:運動療法用)

おわりに

運動器疼痛管理を促す認知行動療法の有用性に関するエビデンスは諸外国の研究報告が中心であるため、今後我が国でも研究成果の蓄積が必要であるが、痛み対処スキルトレーニングのような認知行動療法を運動療法と併用しながら膝痛高齢者に施行していくことで、運動器疼痛に対して適応的な対処方略の採用が促されれば、運動療法からの脱落を最小限に食い止め、運動習慣の形成に好影響をもたらす可能性が高まり、結果として疼痛や活動制限への長期的な効果が期待できる。また近年は、慢性疼痛管理においてAcceptance and Commitment TherapyやMindfulness-based approachといった第三世代の認知行動療法も注目されており26)、運動器疼痛管理においてもその有効性について検討していくべきである。

今後の課題の1つとして、痛み対処スキルトレーニングのような認知行動療法を誰が提供するのかが挙げられる。先行研究のシステマティックレビュー21)では、臨床心理士だけでなく、医療・介護現場で高齢者に運動療法を提供する機会の多い理学療法士がその役割を担っている場合が多かった。米国の調査では、約8割の理学療法士が活動ペース配分といった認知行動療法の技法を用いて診療しているという報告もある27)。その他、認知行動療法の提供者が専門職ではない指導者による報告でも良好な結果が示されているが、事前に認知行動療法のトレーニング実施期間を設けている場合が多い。我が国における地域の介護予防現場では、保健師や運動指導の専門家が膝痛高齢者に関わる場合も多く見受けられる。今後、膝痛高齢者が参加するような介護予防事業で痛み対処スキルトレーニングのような認知行動療法が組み込まれたプログラムが提供される体制を構築していくためには、様々な人材が提供できるよう介入者にとっても簡便な内容であり、さらに教育マニュアルなども開発していく必要がある。

付 記

本稿は、第21回日本行動医学会学術総会シンポジウムで発表した内容をまとめたものであり、2013–2016(平成25–28)年度日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(B)「膝痛高齢者の運動の習慣化を促進する介護予防プログラムの開発と普及戦略の構築(25282218)」および2015–2019(平成27–31)年度文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「国民の身体活動不足解消を具現化するための健康スポーツ科学研究の基盤形成(S1511017)」に基づく研究成果の一部である。

文 献
 
© 2015 日本行動医学会
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