抄録
生活習慣病の代表とされる糖尿病は、遺伝的因子とともに過食、肥満、運動不足、ストレスなどの環境因子がその発症に大きく関与し、よって糖尿病の治療は食事療法や運動療法など、生活習慣の改善が大きなウェイトを占める。しかし、発症早期には症状が乏しいため、治療へのアドヒアランスを得ることが困難な例が多い。生活習慣の改善となる行動変化への動機づけやその変化を維持していく過程、さらに、治療内容の複雑さや糖尿病合併症の進行に伴い様々な心理的、行動医学的なアプローチが必要であると考えられる。これらのアプローチを日常臨床上円滑に機能させるために、まず、個人の背景にある心理および社会的要因を把握することが重要である。これらを理解するために、不安、抑うつ、失感情症などの心理テスト、ならびに糖尿病治療に固有の低血糖に対する不安、さらに、糖尿病罹患に伴う疾患ストレス、生活満足度、ソーシャルサポート、セルフエステイーム、ストレスコーピング、食行動上の問題に関する調査票を用いている。また、これを日常臨床上、システムとして機能させるために当科では内科医、精神科医、臨床心理士を中心としたコンサルテーション・リエゾンを実践している。各調査票の結果なども参考に内科の診察時にカウンセリングが必要と判断された患者は、併設された診察室で精神科医の診察を受け、精神科的疾患の有無や薬物療法、カウンセリングなどの介入の要否を決定した。介入後、コンプライアンスは良好で、血糖コントロールはリエゾン経過期間中改善傾向がみられた。コンサルテーション・リエゾンシステムの中で、積極的に心理的、行動医学的に介入を試みることは、患者自身はもちろんの事、患者-家族関係や患者-医療者関係をも扱い機能し、良好なコントロールを得るためのアドヒアランスを高める上で重要であると考えられる。