抄録
自律訓練法による不安抑制の過程で,通常用いられている自己暗示公式の言葉の本来持っている意味内容が,どの程度の役割を果たしているのかを検証することを目的とした。そのために,通常の自己暗示公式を用いた場合と,それとは正反対の意味内容を持つ自己暗示公式を用いた場合とで,安静効果および不安抑制効果を比較検討し,自己暗示の言葉の意味が果たす役割について,検証しょうとした。安静効果および不安抑制効果の指標としては,生理指標(SCL)および認知的指標を用いた。実験の結果,通常の暗示公式を用いた場合と,それとは正反対の意味内容を持つ暗示公式を用いた場合とで,安静効果および不安抑制効果において,有意な差は認められなかった。したがって,自律訓練法における不安抑制の過程で,自己暗示公式が本来持っている意味内容は,本質的な役割を果たすものではないことが示唆された。