抄録
本研究では、怒り喚起を伴う対人場面における自己陳述を測定できる怒りの自己陳述尺度を作成し、標準化することを目的とした。青年期の学生596名のデータを対象として因子分析を行った結果、第1因子「他者からの不当な扱い」、第2因子「敵意に満ちた考え」、第3因子「報復の正当化」、第4因子「自己への叱責」、第5因子「他者への非難」が抽出された。尺度全体および各下位尺度ともに安定的な内的整合性が示されたことから、尺度の信頼性が認められた。また、他尺度との関連性により併存的妥当性が確認された。加えて、イメージによる怒り喚起状態に伴って、尺度得点が増加したことから、怒り喚起状態における自己陳述を測定する尺度としての構成概念妥当性が裏づけられた。今後、怒りの認知的側面を標的とした認知行動療法を施す際のアセスメント・ツールとして、本研究で標準化された怒りの自己陳述尺度を活用することが望まれる。