故郷とはどのように創られていくのだろうか。そしてそれが移住を経験した人にとっての帰るべ き場所となるにはいかなる過程があるのだろうか。本論文は、南スーダン出身のクク人が、植民地 化や内戦等による移住を繰り返す中で「カジョケジ」と呼ばれる場所を故郷として眼差すようにな る過程を見ていくことを通して冒頭の疑問に答えることを目的としている。
クク人は東ナイル系の民族であり、内戦等の事情で多くがその地を離れた経験を持つ。彼らが現 在故郷とみなす南スーダン共和国旧中央エクアトリア州カジョケジ郡は、ベルギーによる植民地支 配期に名付けられた場所であり、彼らは移住を繰り返す中、各地のクク人同士による相互作用を通 しカジョケジを「ククの故郷」とし、さらにはカジョケジはククにとどまらず、カジョケジ出身者 すべての故郷とみなされる場合もあった。
そして第2次内戦終結後、カジョケジに帰還し、そこでの生活を経験した人々は、避難先での生 活を背景としながら、カジョケジにおける生活を通してカジョケジの中でのそれぞれの「ホーム」 を見出していく。だが、「外」に対する時は変わらずカジョケジはククという民族にとっての故郷 である。