本稿の目的は、アフェクト論の観点からパンデミック下の医療現場で起きたアクター間の相互作用について検討することである。特に韓国の「コロナ19」病棟における防護服と看護師に注目する。本稿では防護服を病棟内で相互作用しあうアクターのひとつとして捉え、看護師側だけでなく防護服側の視点も交えながらアクターの動きを描き出す。感染症対策マニュアル上では単純に人間をウイルスから防護するだけのはずだった防護服であるが、現場ではそれぞれに物質性と文脈を持つ防護服と看護師、その他のアクターが出会うことで新たな作用が生じ、アフェクトの秩序が乱されたり連続性が失われたりする。これを本稿ではアフェクトの攪乱と呼ぶ。防護服は独特の環境における多様なアクターとの相互作用によって、防護服に合った身体操作をするよう看護師たちを飼いならそうとする。一方で看護師たちは業務を遂行するため、防護服が遮断しようとする防護服外部の刺激を拾い上げようとするとともに、自らの身体と防護服の間に「第3者」を介在させることで防護服を飼いならそうとする。防護服と看護師が接触を継続せざるを得ない状況下、攻防自体は継続して繰り広げられつつも、アフェクトの秩序が再編されてゆく。