環境危機が進行する現在、大量消費・大量生産の社会システムから持続可能な社会システムへと抜本的につくり替えることが求められている。近年、抗議デモやロビー活動により規制やガバナンスを求める従来型の社会運動だけではなく、抜本的に生活を変えることによって持続可能な社会を目指す人々が現れている。本稿では、「ナリワイメイカー」と呼ばれる、暮らしの中から仕事を自らの手でつくり出す人々に着目し、彼らの実践がどのように環境危機に対する「オルタナティブな政治」となりうるかを論じる。そのために本稿では、「人間以上の社会運動」という分析視点に依拠しながら、「エコロジカルな繕い」という概念を導入する。どのようにナリワイメイカーたちが現在の政治経済システム、労働環境、インフラ、人間関係を別のものに置き換え、新たな方法や関係を実践的につくっているのか。言い換えれば、どのように人間社会と地球環境の関係を繕っているのか。本稿はこの問いに答えていく。民族誌の部分では、ナリワイという思想を掘り下げるとともに、作業服メーカーの事例、食や農に関するナリワイをつくって暮らす女性の事例を取り上げる。