文化人類学
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《特集》難民の経済活動と場所の創造
元難民の経済活動が創る場所
地域統合政策下のザンビアにおける難民セトルメントと再定住地に注目して
村尾 るみこ
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2025 年 90 巻 2 号 p. 278-293

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抄録

本論ではザンビアで定住する元アンゴラ難民の経済活動をとおして、元難民が暮らす場所の特徴を明らかにした。ここでは、地域統合政策に対する元難民の経済活動を生態人類学分野のサブシステンス経済に関する議論を用いて分析した。元難民のサブシステンス経済は、中南部アフリカ地域で発展してきたものである。つまり、現地の自然環境に依存しつつ、17世紀以降の地域内外の交易、植民地支配と国民国家形成の過程でつくられたものである。ザンビアでは、2014年以降、難民の地域統合政策が開始された。政府は、アンゴラ難民を在留外国人へと法的に移行し、難民セトルメントから再定住地へ移住させる政策をすすめた。それ以降、アンゴラ難民は、元難民と呼ばれるようになった。政府やUNHCRは、元難民に再定住地で定住し経済活動をおこなうことを期待した。しかし元難民の多くは、不安定な再定住地へ移住しなかった。不安定な状況に対処すべく、元難民は、キャッサバとトウモロコシの栽培特性を活かし、自然環境の異なる難民セトルメントと再定住地を使い分けながらサブシステンス経済を営んだ。その際に基盤となったのが、親族関係である。本論が明らかにした元難民の経済活動が創る場所とは、不安定・不確実さを助長する難民政策下を生き抜く過程のなかから生み出されたものである。つまり、サブシステンス経済を営むことで、難民セトルメントと再定住地双方に軸足をおきつつ、必要に応じて国家や市場との関係を選び取る生活の場である。不確実性に直面しつつも、元難民は状況に応じて生活の場を再編し続けている。

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2025 日本文化人類学会
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