抄録
昭和30年代後半から, 我が国の疾病構造が感染症優位の時代から非感染性疾患に推移し始めた中で成人病対策がとられるようになった。そして, 21世紀を目前にこの呼称では加齢による影響が色濃く, 罹患は致し方ないものという捉え方もみられるなどから, 平成8年12月厚生省は, それまで用いてきた「成人病」という呼び名を「生活習慣病」とした。
成人病対策では, 特に動脈硬化性疾患としての脳卒中や心臓病, 更には癌についても早期発見, 早期治療という二次予防が中心であった。しかし生活習慣病対策では, これらへの罹患を促す背景病因である高血圧, 糖尿病, 高脂血症, そして肥満など, 遺伝を背景に持つとは言え生活習慣が根強く関与する疾患群の一次予防をも視野にいれている。このような認識に鑑みて生活習慣関連疾患としての「生活習慣病」が提言されたという訳である。
ここでは, 21世紀における我が国の糖尿病像を生活習慣病というコンセプトの中で捉え, 疫学から糖尿病の診断, 予防ならびにセルフケアと治療の在るべき姿までを展開することにしたい。