心筋梗塞症 (MI) の二次予防と長期予後の改善にAngiotensin converting enzyme inhibitor (ACEI) が有効か否かを, 高脂血症非合併例, 合併例のそれぞれで明らかにするため, 初MI生存退院例を対象として無作為比較対照試験を行った。全国43施設から登録された1028例中, 1025例が解析可能であった。男性799例, 女性226例で, 平均年齢は62.4±10.7歳であった。高脂血症非合併例は906例でACEI投与群445例と非投与群461例に, 高脂血症合併例は119例で, それぞれ56例と63例とに振り分けられた。薬剤割付け状況は高脂血症合併群, 非合併群ともに均等であった。今回は中間報告として, ACEI投与群501例と非投与群524例で, 登録時の臨床背景解析と1998年12月31日までの予後解析を行った。
臨床背景には, ACEI投与群で喫煙者が多く, 経皮的冠動脈形成術施行例が少なかった以外は2群間で差がなかった。観察期間は平均3年7ケ月で, 994例 (97%) での心事故発生率をKaplan-Meier法で求めた。突然死, 心臓死, 非致死的心筋梗塞症, 入院を要する狭心症および心不全, 冠動脈バイパス術または経皮的冠動脈形成術を心事故とした。5年間での心事故発生率は, ACEI非投与群30.1%, 投与群26.5%で, 後者で低い傾向にあるが, 有意差はなかった。本研究は, データセンターを専門管理組織 (Contract Research Organization) に設置し, 欧米と同様のスタイルで行った, 本邦ではじめての多施設共同大規模ランダム化臨床試験で, 2000年12月に最終予後確認を行い, ACEI の二次予防効果の有無を明らかにする予定である。
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