抄録
教育現場では,フラストレーション状況からは,なぜ生起したのかを理解することが困難な攻撃行動を表出する者がおり,表出者への対応に苦慮している。本研究は中学生を対象として,フラストレーション状況で表出される攻撃行動を反応的攻撃と捉え,その生起の理由を理解することが困難な攻撃行動を表出する者の内的特徴の一側面を明らかにすることを目的とした。内的特徴の測定には中学生用攻撃性質問紙(HAQ-S) を用い,状況設定にはP-F スタディの24 場面の内,反応的攻撃が表出され難いと考えられる欲求阻止者の意図が非敵意的と評定された場面を複数選定した。これらの場面群での反応的攻撃の表出者と不表出者のHAQ-S の各因子の尺度得点の平均値の差の検定を行った。その結果,男子の表出者は不表出者に比して「敵意」が高いことが示された。この状況での男子の表出者は,他者への否定的な信念が強く,他者の意図を敵意的に解釈しやすい特徴を有することが示唆された。