抄録
保育者は,それぞれの人生を歩み,日々の生活を営みながら保育職に従事している。本研究では,中堅保育者を対象に,アイデンティティと生活領域の価値との関係を検討した。具体的には,先ず,アイデンティティ地位判定尺度(加藤,1983)により中堅保育者269 名のアイデンティティ地位を同定した。次に,4つの生活領域「保育(職場)」「家庭」「余暇」「友人関係」の価値について,アイデンティティ地位毎の相違を量的に検討した。アイデンティティ地位毎の保育者効力感も合わせて分析した。さらに,文章完成法(SCT)を用いた記述データから,保育(職場)への意識について,アイデンティティ地位毎の相違を検討した。中堅保育者においては,アイデンティティ地位に拘わらず生活領域の価値は同様であったが,保育への意識には質的な相違が示唆された。最後に,本研究の結果を踏まえて討議し,今後の課題を述べた。