応用教育心理学研究
Online ISSN : 2436-6129
Print ISSN : 0910-8955
35 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 三島 美砂, 小野瀬 雅人
    2018 年35 巻1 号 p. 3-16
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー
     小学校学級担任経験のある教師10 名に対して, 半構造化面接をおこない, 学級集団全体を対象にした指導行動, 学級集団の中にいる児童個人を対象にした指導行動, 個別指導時の児童個人を対象にした指導行動の3 つに影響を及ぼす教師の潜在的影響力について聴いた。その結果, 学級集団全体への指導行動に対しては潜在的影響力「自信」,「 一貫性」,「 受容」,「 公平性」,「 親近・明朗性」,「授業力」,「 威圧感」,「 自然体」,「 正当性」の 9つが大きく影響していることがわかった。次に, 学級集団の中にいる児童個人に対する指導行動に大きく影響しているのは, 潜在的影響力「自信」,「一貫性」の2 つであることが示された。さらに, 個別指導時の児童個人への指導行動に対しては,「受容」と「親近・明朗性」が大きく影響していた。
  • 新谷 しづ恵
    2018 年35 巻1 号 p. 17-27
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー
     本研究は,生徒の学力を向上させるために,学習効果の高い学習過程を検討したものである。学習効果が高いと言われている学習過程に,有意味受容学習がある。先行オーガナイザーを活用する有意味受容学習は,Ausubel(1960) が提唱したものである。Ausubel(1978) は,先行オーガナイザには説明オーガナイザーと比較オーガナイザーがあると述べている。そこで,説明オーガナイザーを活用した学習過程と比較オーガナイザーを活用したものではどちらが学習効果が高いのか,中学生を対象に,「化学変化」を教材として検討した。授業前に事前テストを,授業後に事後テストと遅延テストおよび授業に対する意識調査を実施し,その結果を心理学的条件下で統計的に分析し比較検討した。検討の結果,説明オーガナイザーを活用した学習過程の方が比較オーガナイザーを活用したものより学習効果が高い傾向がみられた。
  • 岡本 かおり
    2018 年35 巻1 号 p. 29-40
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,保育者と子どもの信頼関係について,保育者自身の意識に着目し,保育者の行為や,信頼感を実感している時の子どもの姿を通して検討するものである。そのために, 質問紙調査法によって保育経験のある115 名のデータの分析を行った。第一に,「保育者の子どもへの関わり行動尺度」を用いて検討した結果,「親和的関わり」因子と「把握的関わり」因子の2 つの因子による子どもへの関わりが行われていた。「親和的関わり」は,多くの保育者が実践している関わりである一方,子どもの内面を理解して関わる「把握的関わり」については,保育所の初任者の得点が低いことが明らかになった。そして,第二に,信頼感を実感している時の子どもの姿について,保育者の自由記述から8 つの大カテゴリ「好意」「接近態度( 行動)」「接近態度( 言葉)」「安心」「表情」「成長」「受容態度」「保護者情報」にまとめた。過半数以上の保育者は,保育者に関わろうとする子どもの姿によって,保育者に対する子どもからの信頼感を実感していることが明らかになった。
  • 勝見 慶子, 田村 隆宏, 藤村 裕一
    2018 年35 巻1 号 p. 41-51
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,幼児は個人情報をいつ頃から認識できるようになり,その重要性を理解した上で守ろうとする行動に移すことができるかを明らかにすることであった。そのために,幼児128人を対象にして個人情報保護に関する事前指導ありの実験群となしの統制群に群分けをし,知らない人から個人情報を尋ねられる場面で適切な対応ができるか否かを比較検討する調査を行った。その結果,4・5歳児とも知らない人に名前を答えない,知らない人から遠ざかるといった態度は事前指導によって促された。それに対して,知らない人への回答を拒否する発言,知らない人との会話を発展させない行動では,5歳児において,その効果が確認された。これらのことから,就学前の段階での個人情報保護教育の有効性とその重要性が明らかにされた。
  • 片山 美香
    2018 年35 巻1 号 p. 53-66
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー
     保育者は,それぞれの人生を歩み,日々の生活を営みながら保育職に従事している。本研究では,中堅保育者を対象に,アイデンティティと生活領域の価値との関係を検討した。具体的には,先ず,アイデンティティ地位判定尺度(加藤,1983)により中堅保育者269 名のアイデンティティ地位を同定した。次に,4つの生活領域「保育(職場)」「家庭」「余暇」「友人関係」の価値について,アイデンティティ地位毎の相違を量的に検討した。アイデンティティ地位毎の保育者効力感も合わせて分析した。さらに,文章完成法(SCT)を用いた記述データから,保育(職場)への意識について,アイデンティティ地位毎の相違を検討した。中堅保育者においては,アイデンティティ地位に拘わらず生活領域の価値は同様であったが,保育への意識には質的な相違が示唆された。最後に,本研究の結果を踏まえて討議し,今後の課題を述べた。
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