抄録
本研究では,信頼関係構築による変化に焦点を当て,信頼関係を基盤とした保育の特徴を捉えることを目的とした。幼稚園教諭と保育士を対象にしたインタビュー調査によって明らかになった結果は,次にまとめられる。第一に,子どもの変化における【情緒的安定】,【自己表出態度】,【友達に関する関係構築態度】,【外的表出態度】については,半数以上の保育者による言及があり,特に,《情緒的安定-自己表出態度》の言及が多く,子どもの心の安定と自分を出せることを関連付けて捉えていた。第二に,保育者の変化における【自己充実感】,【向上的実践態度】については,半数以上の保育者による言及があり,これらは単独で現れるのではなく,子どもや保護者の変化と同時に語られていた。このような子どもの変化や保護者の変化と関わり合いながら,保育者自身の内面や保育実践において肯定的な影響をもたらす子どもとの信頼関係構築は,保育の専門性を高める上で重要な保育者の実感になりうることが示唆された。