抄録
本研究は,実親介護における行動様式の構造および介護負担や精神的問題との関連を明らかにすることを目的とした。実親を在宅介護している,もしくはしていた経験のある534名分のデータを分析対象とし,行動様式に関する項目について因子分析を行ったところ,「没入」「手放す介護」「サービスの活用」「自動操縦」「自分や親に合わせる」の5因子が抽出された。いずれの因子においても介護組み合わせ(母・父・娘・息子)による差異は見られなかった。介護負担に対しては「自動操縦」が正の説明力を,精神的問題に対しては「没入」「自動操縦」が正,「手放す介護」が負の説明力を持った。以上をふまえ,「没入」に対してコントロール欲求をやわらげたり感情や日々の親の変化を共有したりすること,「自動操縦」に対してマインドフルネスを行うこと,家族との関係調整やピアサポート等により「手放す介護」を促進することで,精神的問題が軽減する可能性がある。