抄録
本稿では,福祉施設における認知症介護の場面で介護職員が認知症患者である入所者に話しかける方法に着目し,その特徴を明らかにする。認知症介護に関する映像作品を分析素材とし,映像データのなかで介護職員が入所者に話しかけるときの方法を,会話分析の手法によって記述した。4つの話しかけ場面について,職員が入所者のすぐそばに自身の体を配置し,顔と顔を近づけ,視線を継続的に入所者に向けることや,他人の体に触れることに関する規則に従いつつ,入所者に触れながら話しかけることが記述された。また,そこでは話しかけるタイミングの遅さが共通していた。職員が話しかけるときの慎重さ,丁寧さという特徴は,会話の相手を「認知症」という社会的カテゴリーと結びつけるものである。