抄録
聴覚障害児者のコミュニケーション問題は複雑であり,課題が大きい。特に,日常生活の聞こえにくい場面では,会話が十分に分かっていなくてもあいまいな返事をしてしまうために,コミュニケーションが途切れやすくなる。このような場面ではコミュニケーションスキルが必要となり,これらを習得するためにコミュニケーション指導を実施している。本指導の目的は,聞き取れない,分からない場面での能動的な打開方法(コミュニケーションスキル)を習得させ,自身の働きかけや行動でコミュニケーションがとれるという自信を獲得させることである。方法は,1.障害認識への促し,2.聞こえにくさを可視化して読み解,3.イラストを使用してのスキル活用のデモ,4.ロールプレイをとおした会話指導,5.同障の仲間との交流(ピア・カウンセリング)から構成されている。聴覚障害児者のコミュニケーション問題に対するハビリテーションは,障害認識を高め,コミュニケーション意欲が高まるものとすることが必要である。