コミュニケーション障害学
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39 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 遠藤 俊介, 田中 裕美子
    2022 年39 巻3 号 p. 131-142
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    Hadley, Rispoli, Holt, et al.(2017)は,語連鎖初期の子どもの言語発達を促す指導法としてトイトーク(Toy Talk:TT)を提唱した。これは,保護者を指導して主語に多様な名詞を用いた言葉かけを意識させることで,子どもの文表出の発達を促すものである。本研究では,日本語版TT が日本の母親の文の多様性(sentence diversity)を増加させるか,また,母親の言葉かけを指導することが言語に問題のある子どもの文の発達を促すかを検証した。日本語版TT では,保護者に動態動詞を意識した言葉かけを指導することで,保護者の文の多様性を増やし,子どもの文の発達を促す。言語に問題のある子どもの母親4名に月1回約60 分の個別指導を2〜3カ月行い,「おもちゃについて話す」「その動きについて話す」という2つの方略を教示した。その結果,指導を受けた母親とその子どもの文の多様性が増加した。TT 指導により保護者の言葉かけを変えることが可能であり,その効果として子どもの文発達を促す可能性が示唆された。
  • 加倉井 智美, 勝二 博亮, 田原  敬
    2022 年39 巻3 号 p. 143-149
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    ダウン症児における言語発達の特徴として,発話の不明瞭さが挙げられるが,単音節と単語の発語明瞭度には差が大きく,単音節明瞭度から期待される発語明瞭度が得られない事例が多いとの報告がある(石田,1999)。そこで,本研究では,ダウン症児7名と健常成人10 名に対して,日本語の語頭単母音と語中の連続した母音(二連母音:/io/,/oi/,/ao/,/oa/)について音響分析および聴覚的印象評定を行い,連続した構音を生成する際の舌の動きの困難さに関する評価を試みた。その結果,ダウン症児における二連母音での /i/ と /o/間の第2フォルマント(F2)の遷移幅が健常成人のものと比べて有意に減少していた。このことから,ダウン症児においては,母音を連続させて発声する際に舌の動きが制限され,そのことが単語レベルでの発語明瞭度を低下させる一因になっていることが示唆された。
  • 城本  修
    2022 年39 巻3 号 p. 154-159
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    音声治療のメタアナリシスでは,間接訓練と直接訓練の併用で治療効果が認められる一方で,ドロップアウト率の高さも指摘されてきた。健診などの健康行動のアドヒアランスを向上させるために提唱された健康行動理論を検討すると,①自己効力感,②ヘルスリテラシー,③恐怖アピールなどの要因が考えられた。これらの要因が,音声治療のドロップアウト率にも関与しており,音声治療プログラムを立案する上で検討すべきであると考えられた。
  • 佐藤 紀代子
    2022 年39 巻3 号 p. 160-165
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    聴覚障害児者のコミュニケーション問題は複雑であり,課題が大きい。特に,日常生活の聞こえにくい場面では,会話が十分に分かっていなくてもあいまいな返事をしてしまうために,コミュニケーションが途切れやすくなる。このような場面ではコミュニケーションスキルが必要となり,これらを習得するためにコミュニケーション指導を実施している。本指導の目的は,聞き取れない,分からない場面での能動的な打開方法(コミュニケーションスキル)を習得させ,自身の働きかけや行動でコミュニケーションがとれるという自信を獲得させることである。方法は,1.障害認識への促し,2.聞こえにくさを可視化して読み解,3.イラストを使用してのスキル活用のデモ,4.ロールプレイをとおした会話指導,5.同障の仲間との交流(ピア・カウンセリング)から構成されている。聴覚障害児者のコミュニケーション問題に対するハビリテーションは,障害認識を高め,コミュニケーション意欲が高まるものとすることが必要である。
  • 藤野  博
    2022 年39 巻3 号 p. 166
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
  • 中村  光
    2022 年39 巻3 号 p. 167-172
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,近年の失語の言語訓練について3つの側面から論じた。まず,訓練効果のアウトカムとして,SLTA など機能障害の指標だけでなく,コミュニケーション活動制限の指標も重要であることを指摘し,日本における現状について述べた。次に,「どのように訓練するか」として,近年の訓練方法を「言語機能アプローチ」「コミュニケーションアプローチ」「心理社会的アプローチ」「新しいアプローチ」に大別して概要を述べた。最後に,「どのくらい訓練するか」として,CI 失語療法を紹介しながら,訓練量と失語の回復の関係について文献レビューの結果を述べた。週あたりの訓練が6〜7時間以上であると,2時間程度より回復を促進するようであった。一方で,intensive な訓練は患者の負担にもなり得るので,よりいっそう,患者との共同意思決定が大事であると論じた。
  • 関  啓子
    2022 年39 巻3 号 p. 173-181
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    Melodic Intonation Therapy(MIT)は非流暢タイプの失語症者の発話流暢性向上のためにAlbert, Sparks, Helm(1973)によって開発された極めて有効な技法である。表出しようとする言葉のプロソディーに関わる音楽的要素(メロディー,リズム,ストレス)を利用して段階的に自然で流暢な発話を産生する技法である。本技法は世界中に広まり,各国語で使われている。そこで演者ら(関,杉下,1983)は,日本語の特質を考慮した形で原版の方法を踏襲したその日本語版(MIT-J)を開発した。しかし,効果を示す報告は多いものの,MIT-J の有効な臨床的報告はこれまで極めて少ない。その理由は本技法が文字によって説明されており,実習を伴わないので臨床家にとってマスターしにくいと感じられたと考えられる。そこで,本技法に関する実習つきのオンラインセミナー(一般用とコメディカル用)が企画され,現時点では大変好評である。今後も必要な人に本技法が届けられることが期待される。
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