抄録
本稿は,コミュニケーションが難しい患者との関わりの経験を,現象学を手がかりに考察することを目的とした。研究参加者は,植物状態患者をケアする看護師であり,看護師が患者と関わっている際に経験していることを解釈した。その経験は,二人で一つの行為を成し遂げることで「合う」という時間が感じ取られたり,接触感覚を伴った視線が絡むが瞬間として捉えられたり,相互反転の経験が相手の目に私が映っていることを感じ取らせたりしていた。いずれも,相手を対象化する科学的な態度や医学的定義,二元論的な発想から距離を取ったからこそ,浮かび上がってきたコミュニケーションの基盤となる経験であった。