聴能言語学研究
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喃語における母国語の影響
成人による聴取・識別実験から
市島 民子
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1988 年 5 巻 1 号 p. 16-21

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抄録
前言語期の乳児音声における母国語の影響を調べるため,母国語の異なる日本,中国,韓国,米国の乳児の喃語を対象に,比較実験を行った.
実験は,『成人による聴取・識別』という方法をとり,専門家,非専門家の2群の日本人成人が,同一月齢(6,8,10ヵ月)の言語比較対(日本-中国,日本-韓国,日本-米国)の中から,日本の乳児の喃語を聴取・識別した.
この実験の全識別率(同定率)は,73.8%であったが,各条件での同定率に以下の違いを認めた.
1) 言語間では,中国との比較で高く,韓国との比較で低い.
2) 月齢間では,10ヵ月は両識別者群とも高く,8ヵ月は群による差がみられた.
以上の結果より,喃語には,識別可能な言語間での相違があること.この相違は10ヵ月でより明瞭になり,母国語の影響のあることが示唆された.
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© 日本コミュニケーション障害学会
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