語彙障害の解析には認知神経心理学的アプローチが有効である.しかし,このアプローチの最大の問題点は治療への方向づけの弱さであり,治療者は直感や試行錯誤によって治療戦略やアプローチを選ばねばならない.言語機能の回復には,脳の神経回路の再構築と,それを基盤とした活動依存的機能学習が必要である.治療を効率的で無駄のないものにするためには,神経・認知レベルの回復過程に沿い,回復を促進するような働きかけを選択することが望ましい.そのため,神経・認知の回復パタンや個人差に関する神経学的側面からの知見を言語臨床に取り入れ,活用していくことが必要である.