抄録
聴覚障害児の日常生活におけるきこえの自己評価について検討するために,音のきこえに関する22項目と会話の理解に関する6項目の全28項目からなるきこえの自己評価リストを試作し,聾学校小学部に在籍する聴覚障害児42名を対象に試行した.得られた評価を日常生活聴覚活用得点として点数化し,聴力との関連の検討と主因子法バリマックス回転による因子分析を行った.聴力の関連の検討では,相関分析により平均聴力レベルや補聴閾値との間にかなりの負の相関が認められた.因子分析の結果は,音のきこえに関する項目のうち20項目から生活親近音・社会信号音・低周波数音・不親近音の4因子が抽出された.会話理解については,話者特定の難易度と会話の日常親近性の2因子が抽出された.分析を通して得られた26項目のクロンバックのα係数は満足できる値を示し,評価項目の内的一貫性が確認された.