教科教育学コンソーシアムジャーナル
Online ISSN : 2758-6995
特別論文
教科教育学研究に共通用語・概念はあるか ―諸教科における「理解」の用法―
渡部 竜也 阪上 弘彬石川 照子草原 和博川口 広美
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2024 年 2 巻 1 号 p. 1-15

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抄録

 本稿では,「理解」に着目し,日本の教科の学習指導要領で出現状況等を確認するとともに,教科教育学コンソーシアムの加盟学協会の事典・用語集等における意味内容を比較した。その結果,次のような特徴が明らかになった。1)教科によって学習指導要領内での用語「理解」の登場回数,活用および研究者の「理解」という用語への問題関心には顕著な差異を確認できる。2)「理解」については,事典・用語集の次元で見るとブルームのタキソノミーに登場する「理解」の定義と同じ活用をする教科と,あえてドイツの精神科学から「理解」の考え方を重視する教科があり,前者は理科・保健体育科など自然科学系,後者は社会科など人文・社会科学系の教科に見られる傾向にある。 3)事典・用語集においてドイツの精神科学の「理解」の考え方を参照した教科では,その教科の学習指導要領において、人間への「共感的理解」を通して何らかの態度形成を求めるというアプローチが採用される傾向にある。特に社会科においてそれは顕著である。4)「共感的理解」が学習指導要領内で重視されていない教科では,事典・用語集においても「理解」はブルームの定義がそのまま採用される傾向にある。理科などがその典型である。

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