2024 年 80 巻 27 号 論文ID: 24-27013
本研究では,海面上昇による日本沿岸域の潜在的浸水被害の経済評価を行い,複数の気候モデルを用いて不確実性を評価するとともに,海面上昇への効果的な適応策を提案した.2100年時点の海面上昇に対して被害額は,SSP1-2.6では約218.0-278.2兆円,SSP5-8.5では約423.7-576.8兆円と算出された.また,潜在的浸水域を詳細に分類し,浸水域クラスターとして定義することで,少ない適応費用で多くの浸水影響を防護可能な浸水域クラスターが明らかとなった.さらに,複数の適応シナリオの浸水被害額と適応費用を費用便益分析によって比較することで,浸水域を限定して防護することが効果的であることが示された.また,社会的割引率を考慮した比較を行うことで,一度に防護するのではなく,後年に複数回に分けて適応策を講じることが効果的であると示された.